ちょっと視点を変えて、生命保険の死亡保障額と損害保険(自動車保険)の死亡保障額を比較してみましょう。

まず最初に、生命保険の死亡保険金を考えてみます。

一般的な生命保険で、死亡時に支払われる保険金(＝死亡保険金)は、多くても5000万円程度でしょう。少ない人で数百万円。多い人で5000万円。平均したら2000万円台、という感じだと思います。

理論的には保険加入者(契約者)と、生命保険会社との、自由な契約に基づきますので、3億円の生命保険に入ることも可能です。でも、そんな人の話を聞いたことがありません(会社経営者ではあると聞きますが、私(taku)の身近にはいませんね〜)。

一方、自動車保険に入っていて被害者に支払われる保険金(＝対人賠償保険)は、多い場合には3億円以上になります。車に入っている人はご自分の自動車保険(任意保険)の保険証書を見返してみてください。

たいていの場合、上記の3パターンのどれかに当てはまると思います。
無制限、という人が一番多いかもしれません。

自動車保険で5000万円の対人保険、ということは実際にはありえないのです。

人が死亡して、それに対してお金が支払われる、という仕組み自体は同じです。

なのに、生命保険では2000万円。損害保険では3億円。えらい違いです。

と言う事はですよ。こんなことが起こりえます。

単純に病気で死亡した場合には、自分で入っていた生命保険の死亡保険金2000万円をもらうだけです。

自動車保険(任意保険)に入っている車相手の事故で死亡した場合には、自動車保険の対人賠償保険で3億円もらえて、さらに自分で入っている生命保険の死亡保険金で2000万円貰えることになります。合計で、3億2000万円です。

これって、どう考えてもオカシイですよね！

病気で死亡したら、2000万円。
交通事故で死んだら、3億2000万円。

もちろん、実際の事例ではこんなに単純な話ではないです。

生命保険は定期保険に入っていて、その保険期間中に死亡した場合という前提です。自動車保険の給付には、加害者との過失割合や、被害者の逸失利益を基にして、保険金が算定されます。事故の状況・被害者の社会的地位・収入などによって、支払われる保険金は大きく変わってくるでしょう。ですので、交通事故だからと言って、常に3億円貰えるわけではありません。そもそも任意保険に入っていない人も実は多いのですから、、、、。

でも、現実にこうした事例がある、のです。

生命保険の死亡保険金の額は、契約者が自由に決められます。正確に計算する場合には、「死亡後に必要な金額」を出して、そこから「手当て可能な金額」を差し引いたものが必要保障額になります。
詳細は、こちらをご覧ください。
『必要保障額を把握していますか？』

また、生命保険は、一定の期間に死亡した場合には必ず保険会社は保険金を支払う必要があります。人は必ずいつかは死にますので、保険会社が保険金を支払う機会は多いです。ですから、極端に大きい金額になることはありません。

一方、自動車事故の損害賠償額は、被害者の逸失利益で計算する、ということになっています。被害者が将来稼ぐであろう生涯賃金を算出して、それが損害賠償の額になる、という奇妙な話になっています。遺族にとっての必要補償額などは全く計算されることがありません。

生涯賃金を計算するのですから、莫大な金額になります。
たとえば、医学部を卒業して医者になったばかりの25歳の青年が被害者として交通事故で死亡した、とします。こうした事例では生涯賃金はかなりの額になるでしょう。この青年の両親が、生活に全く困らないくらいお金があったとしても、関係ありません。
両親の元に、数億円のお金が転がり込んでくるのです。

自動車保険は、事故を起こして、法律上の賠償責任がある時のみ保険会社が保険料を支払うことになります。そのため、保険会社が保険金を支払う機会は少ないです。ですから、生命保険に比較すると、低い保険料で高額の保険金を支払うことができます。

なぜ、自動車保険の損害賠償額・死亡保険金がこんなに高いか、ということですが皆さんご存知ですか？　答えは単純です。「法律と裁判所の判例で決まっているから」です。

これ以上の詳細な理由についてはここでは触れません。判例変更される可能性はほぼゼロですから、是非をいくら議論しても意味がないからです。

私が言いたいのは、実際問題として、数億円のお金を受け取ったら遺族の人生は狂うことが多い、のではないか、と言うことです。

これまで、毎月の給料が数十万円で、年間の収入が数百万円という一般の家庭で、感情を乱さないで数億円のお金を扱うことができる人は少ないと思います。皆さんはどうでしょうか？

個人的には、高額の損害賠償なんて、百害あって一利なし、だと思います。

まあ、そうは言っても、自動車保険に入る加害者側としては、基本的には対人無制限の保険に入るしかないです。被害者に対して、「あなたの人生が狂ってしまうかもしれないので、3000万円の対人保険にしか入りません」なんて言えませんし、裁判所も許してくれません。

ですから、いろいろ書きましたが、車をお持ちでしたら任意保険は必須です。そして、任意保険(自動車保険)に入る時には、対人：無制限 で入ってくださいね。